米軍・空母艦載機訓練「馬毛島(まげしま)」買収の意義は?

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馬毛島(まげしま)

目 次

馬毛島の買収合意までの地権者
..との経緯!

馬毛島の活用(案)
..2.1 米軍の活用方法
..2.2 自衛隊の活用方法
..2.3 
産経新聞記事より(2018.7.15)

3 馬毛島買収のまとめ


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政府は2019年1月11日(金)の記者会見で、米原子力空母艦載機の陸上空母離着陸訓練(FCLP)の候補地となっていた馬毛島(鹿児島県西之表市)の買収交渉が合意に達する見通しとなったと明かしています。

当初、防衛庁が
算定した馬毛島(西之表市)の査定額約40~50億に対して地権者(タストン・エアポート(株))は数百億円(500~600億)と価格に大幅な開きがありましたが、2018年6月、同社が債権者から東京地裁に破産手続開始を申し立てられ、東京地裁より保全管理命令を受けた影響及び、現在行われているFCLP訓練は、米空母艦載機が駐留する「岩国基地」から約1,400㎞(直線換算で札幌~福岡)離れた硫黄島(東京都)で行われており、米パイロットの安全確保のためには、早期に「岩国基地」から約400㎞ 離れた馬毛島での訓練に変更する必要性が認められることの2つの理由から、政府が当初査定額に100億円以上積み増した約160億円で買収することを地権者と大筋で合意しました。

陸上空母離着陸訓練とは?
Field Carrier Landing Practice
FCLP は米海軍の用語で、空母艦載機が陸上滑走路を空母の飛行甲板に見立ててタッチアンドゴー(離着陸)を繰り返す騒音を伴う飛行訓練をいう。

馬毛島の買収合意までの
地権者との経緯!


馬毛島は、鹿児島県(佐多岬)南方35㎞、種子島の西方12㎞の東シナ海にあり周囲16.5㎞・面積は8.2㎢(東京ドーム174個分)の小さな島で種子島(西之表市)に属します。


最高地点は71.7mの平坦な島で、島内には野生のシカ(マゲシカ)が生息しています。

戦前はトビウオ漁の時期になると漁師小屋として利用されていたが、1951年(昭和26年)以降に開拓団が入植、最盛期の1959年(昭和34年)には、113世帯(528人)が島に在住していました。

サトウキビの栽培・酪農等が行われ、島内には小中学校もありましたが、河川がない、農作に適さない土地で生産性が上がらない等の理由から島外への移転者が増加。

1975年(昭和50年)には「馬毛島開発」(平和相互銀行の関連会社)がレジャー施設の開発ため、ほぼ全島を買収した結果、1980年(昭和55年)4月に無人島になりましたが、第2次オイルショックの影響により開発は頓挫、その後も「石油備蓄基地」「核燃料廃棄物処理場」「自衛隊の超水平線レ-ダー基地」として馬毛島の活用が検討されましたが実現には至りませんでした。

「超水平線レ-ダー基地」の件に関しては、「平和相互銀行」が右翼活動家を通じて、不正経理して捻出した20億の工作資金を政界にばら撒いたとされる「馬毛島事件」が1986年に発覚したことが発端となり「住友銀行」に救済合併され消滅。

1995年「立石建設(東京:世田谷区)」が「馬毛島開発」を買収して子会社とし、名称を「タストン・エアポート」に変更。

2000年以降も「日本版スペースシャトル(HOPE)」の着陸場、鳩山政権(2009年~2010年)では「普天間基地」の移設候補地とされましたが、いづれも実現しませんでした。

2006年、日米両政府が合意した在日米軍再編のロードマップに基づき、米空母艦載機を「厚木基地」から「岩国基地」への移駐に伴い、硫黄島(東京都)で実施されているFCLPの代替地候補とされた。

タストン・エアポート(株)は2006年~2012年、島内の森林1.7㎢を伐採し、島の南北・東西に岸から岸まで横断する2本の滑走路を造成。

2018年6月、タストン・エアポート(株)債権者から東京地裁に破産手続開始を申し立てられ6月15日、保全管理命令を受けた。
負債総額は約240億内外(16年10月末)。

タストン・エアポート(株)の社長交代と返済を債権者が受け入れた為、債権者が破産申し立てを(2018年10月22日)に取り下げられた。

上記の歴史的背景や経緯を踏まえ、2019年1月に政府は160億円で買収することをタストン・エアポート(株)と大筋で合意しました。


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馬毛島の活用(案)

防衛省は自衛隊基地として米軍と共同利用する方針です。

・1
米軍の活用方法

  • 横須賀基地を母港とする米空母「ロナルド・レーガン」の洋上展開前に、FA18戦闘攻撃機などがFCLPを行う(年間2週間程度)。
  • 米海兵隊が沖縄県で実施してきたオスプレイ訓練の馬毛島移転も視野。
  • 米軍佐世保基地には、強襲揚陸艦「ワスプ」他3隻、掃海艇4隻が配備されており、搭載する「ヘリコプター」「STOVL機(F35B)」の訓練にも利用される可能性もあります(米軍佐世保基地~馬毛島まで約300㎞)。

・2
自衛隊の活用方法

2011年7月に防衛省が「鹿児島県西之表市」に提出した資料では、自衛隊の「離島侵攻対処訓練」「大規模災害対処拠点」の施設(滑走路、湾港施設、物資用倉庫)を設置し、種子島には自衛隊員の宿舎建設を検討していることを明らかにしています。

離島侵攻対処訓練

  • エアクッション型強襲揚陸艇(LCAC)
  • 輸送ヘリによる離島上陸訓練
  • 陸自空挺(くうてい)部隊の降下訓練、上陸後の展開・対処訓練など

大規模災害対処拠点

  • 大規模災害に対応する人員・装備・展開拠点としても活用を検討

・3
産経新聞記事より(2018.7.15)

鹿児島・馬毛島を海・空自拠点に
中国脅威防衛強化 F15戦闘機展開

馬毛島の活用案2018.7.15産経新聞

防衛省が、米空母艦載機の陸上離着陸訓練(FCLP)の移転候補地となっている鹿児島県西之表(にしのおもて)市の馬毛(まげ)島を海上・航空両自衛隊の拠点として活用する方針を固めたことが14日、分かった。中国の脅威を踏まえた南西防衛強化の一環で、訓練に加え、有事での空自戦闘機の分散配置の拠点にする。馬毛島の土地買収に向けた調整と並行し、活用方法の検討を加速させる。

防衛省は海・空自の航空機訓練に活用。海自は鹿屋(かのや)航空基地(鹿児島県)のP3C哨戒機、空自は新田原(にゅうたばる)基地(宮崎県)のF15戦闘機が馬毛島に展開し、離着陸や防空などの訓練を行うことを想定する。

空自は短距離滑走離陸・垂直着陸が可能なF35Bを導入し、新田原基地に配備することを検討。海自もヘリ搭載護衛艦いずもをF35Bの離着艦可能な空母に改修することを検討しており、F35Bといずもが馬毛島を拠点に訓練をすることも視野に入れている。


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馬毛島買収のまとめ

馬毛島は「鹿児島」「沖縄」「米海佐世保基地」から地理的に近いため「米軍」「自衛隊」伴にあらゆる訓練を実施することが可能です。

空爆・空挺部隊の降下訓練、上陸訓練、上陸部隊への支援訓練、兵站任務の訓練、空母が参加した大規模な海上軍事訓練なども可能です。

将来、航空部隊の拠点となるならば、東シナ海における制空権の強化にも繋がるため、大規模な航空基地になる可能性もあります。

馬毛島から12㎞しか離れていない種子島(西之表市)ではFCLPによる航空機騒音を懸念に加え「湾港整備」「保安水域」「訓練水域」設定による漁業制限が生じますから反対の声が多数派です。

防衛省は、騒音や漁業制限などの影響に対する補償として「防衛施設周辺対策事業」「基地交付金」「米軍再編交付金」を並べ懐柔しようとしています。

馬毛島でのFCLP実施は、政府の既定路線ですから地元は抗しがたい状況になると思いますが、政府は地元に十分かつ丁寧な説明をして頂きたいですね。



もともとFCLPは厚木基地(神奈川県)で実施されていたが、基地近隣の住宅密集地における騒音問題が深刻化したことから、91年以降の暫定措置として硫黄島(東京都)で行われていました(硫黄島が悪天候の際には、厚木、三沢基地で実施)。

管理人は厚木基地で実施されていたFCLPの騒音は体験していませんが、空母艦載機が編隊を組んで、町田・相模大野上空通過時の騒音は数えきれない程体験しています、FCLPを受け入れる自治体へ敬意を払うことが大切と思います。

以 上

「米軍・空母艦載機訓練「馬毛島(まげしま)」買収の意義は?」でした。

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